幽霊船セレスト号

数多ある物語で形容されている風貌と何一つ変わることのない帆船。
童話に出てくるようにおどろおどろしい海賊船。
損傷が著しいにもかかわらず、沈没することなく航行している船。
夜、霧が出てきたら警戒せよ。すぐそばまで狙っているやもしれぬ。
暗闇の中、濃霧の中、明るい光を見たら迷わず逃げよ。
それはかの有名な幽霊船であるだろう。
その船上を見てはならぬ。あの赤い炎は、青い炎は、魂の炎だ。
その乗組員を見たら最期。

もう二度と陸には戻れぬと思え。
もう二度と温もりは手に入らぬと思え。
もう二度と幸福は訪れぬと思え。
もう二度とその船からは逃げられぬと思え。

あぁ、もうそこまで迫っている。私が私ではなくなる。
体から魂ががぬかれていくような
寒い寒いさむいさむいさむいさむい
たましいがなくなるなくなるなくなる
     ちがう
くわれるくわれる  くわれる
            くわれるくわれる
いやだいやだいやだいやだいやいやいやいやいや



ごちそうさまでした。


——漂流していたとある船に残されていた羊皮紙への殴り書き。
   記述はここで終わっている。

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