2019.03.21 14:16運命の出逢いと呼ぶには勿体ない(カイザイク)君と出会ったのは18の時。父に促され、嫌々受けた見合い話。見合いの会場とされたとある建物の一室で、君は静かに俺を見据え言った。「貧弱そうですね」と。「こら、アザレア! カイザイク様になんて失礼なことをっ!」彼女の母親が作り笑顔で俺に謝罪する。自分もそう思っていることを笑顔の裏に隠...
2019.03.21 14:09恋々と募る恋情(鳳瑞)「鳳瑞」「はい」「お前は我が高潔なる一族の長となるのだから、相応の振る舞いを身につけるのだ」「はい」「我ら宗家の恥を晒すようなこと、名を汚すようなことはせぬよう」「……はい」**********「鳳瑞様? どうなされました?」「いや……」「大事な会合の最中、何を考えておられたのか...
2019.03.21 14:07節分の惨劇(璃亜)「鬼はー外! 福はー内ー!」「……そういえば今日は節分だったわね」辺りから聞こえる声で、璃亜は一人納得したように呟く。両手には買物袋を提げている。「うちも豆まきしたほうがいいかしら」癒音や焚斗も楽しみだったりするのかしら。……焚斗はないわね。変に大人ぶりたがる子だから。癒音は……...
2019.03.21 13:56聖なる夜の贈り物「凩、メリークリスマス!」「今日はクリスマスでしたね」「そうだよ! だから凩にクリスマスプレゼント用意したんだから!」「私にですか?」「はい、どうぞ!」「そんな……私なんかに禊様からプレゼントなんて……」「嬉しくなかった……かな……?」「まさか! 嬉しいですよ!」「じゃあ開けてみ...
2019.03.21 13:47幾度も幾度も(海桐花)兄のように慕っていた。少し頼りないけど優しくて、かっこよくて、いざという時は逞しかった。けれどアイツは裏切った。私達一族を。あの日、アイツがいた集落は無くなっていた。全て黒く炭になり、生き物の気配が無かった。仲間の死体が沢山あった。誰が誰だかわからないくらいの死体。だからきっとア...
2019.03.21 13:42喧嘩喧嘩喧嘩(繁縷)ドンッ!学園の廊下を御形と歩いていて、突然肩に軽い衝撃が走った。「「痛っ」」声が重なる。振り向くと、同じように振り向いて私を見てる女がいた。「ちゃんと前見て歩きなさいよ」「ちゃんと前見て歩いてよ」また同じような台詞を吐く。なんなのよ、コイツ。「「真似しないで」」「「そっちが真似し...
2019.03.21 13:39友人>恋人(ブルートレス)「サイテー!」ぱぁん!渇いた音と女性の罵声が響く。女性は涙目になりながら、足早にその場を立ち去った。ハイヒールの音が遠退いていく。「また叩かれてる」「いたのですか、九十九」「通り掛かっただけ」「そうですか」叩かれた頬をさする。結構強く叩いていきましたね、あの女性は。「今週何人目?...
2019.03.21 13:38冬の温もり(霙)「……寒い」「そうね」手袋をした手に白い息を吹きかけながら梨衣芙は呟く。梨衣芙の鼻は真っ赤になり、まるで某童謡のトナカイのよう。「私のマフラー使う?」「うん、使う」「即答なの。遠慮ないわね」「霙は寒くないんでしょ」「えぇ、寒くないわ」寧ろこういう寒い日は好きよ、と言うのを私は止め...
2019.03.21 13:36dual personality.(桜桃)嫌いよ嫌い。桜桃はゆすらが嫌い。好きだよ。ゆすらは桜桃が好き。ゆすらは明る過ぎる。桜桃には眩し過ぎるの。桜桃が暗いだけ。だからゆすらが居るんだよ。桜桃の中にゆすらが居るんだよ。いらない。ゆすらなんていらない。ゆすらには桜桃が必要だよ?桜桃がいなきゃゆすらは居ない。存在しなくなっち...
2019.03.21 13:30自分を求めて(紫偽)「調整はまだ終わらないのか」「精神が不安定過ぎます」「兵器としては不完全かと」「使い物になるようにするのが、お前達の役目だろうが」「しかし……」「いいから早く調整したまえ」水槽の中から見える者達。いつも我を監視し、コードを繋ぎ、機械を弄る。我の言葉は外には伝わらないが、外の言葉は...
2019.03.21 13:25日常(梨衣芙)「ふぁあ……」大きく伸びをして、先が薄緑に染まったアホ毛をぴょこんと揺らしながら、梨衣芙は体を起こす。同時に部屋の扉が開き、長女の綺雨が入ってきた。寝癖だらけの梨衣芙とは対称的に、濃い水色のウェーブかかった髪はしっかりとセットされ、左側で一部の髪が縛られている。結われた髪について...