節分の惨劇(璃亜)

「鬼はー外! 福はー内ー!」
「……そういえば今日は節分だったわね」
辺りから聞こえる声で、璃亜は一人納得したように呟く。
両手には買物袋を提げている。
「うちも豆まきしたほうがいいかしら」
癒音や焚斗も楽しみだったりするのかしら。
……焚斗はないわね。
変に大人ぶりたがる子だから。
癒音は……楽しみにはしてなくても、あったらやりたがるわね。
……豆、買って帰ろうかな。
璃亜が引き返そうと振り向いた時、顔に何かが当たった。
少し離れたところには見覚えのある三編みが。
「あれは……エミュよね……」
「鬼はー!」
エミュは背後から銃らしきものを取り出す。
その銃口は璃亜に向けられている。
「外ー!」
ニヤリと笑い、叫んだと同時に銃口から無数の豆が飛び出した。
それは真っ直ぐ璃亜へと飛んでいき、顔や腕など、様々なところにヒットする。
その威力も思いの外強く、当たったところは赤くなっていく。
エミュはひとしきり撃った後、そこから逃走しようと璃亜に背を向けた。
走り出そうとしたが、地を蹴る感覚がない。
ふと足元を見ると、エミュは宙に浮いていた。
「エミュ……」
「あ……」
エミュは恐る恐る振り向いた。
そこにいたのは黒いオーラを纏ったように見える璃亜。
「いい加減にしなさーい!」
璃亜の声が辺りに響き渡る。
それからしばらくエミュの姿を見る者はいなかったらしい。
エミュが姿を見せた時、彼が語ったのは、その時の璃亜はまるで本物の鬼のようだったとか。
しかし、エミュはその後のことは全く話そうとすることはなかった。


▽節分の惨劇
≪豆をぶつける相手は選びましょう≫

星屑の欠片

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