鎖(セルセラ)
「お前は妾の代わりとなれ」
目覚めた直後に、目の前にいる幼子に告げられた。
「名は命を縛る鎖、お前の名はセルセラ。妾の目となり耳となり、この鎖された世界の外を妾に教えよ」
まだ10くらいの幼い少女の口から紡がれる、見た目に相応しくない言葉。
上も下も右も左もない空間、時の流れもない、暗く鎖され、世界から外された『破れた世界』。
其処に追いやられたという少女は、怨み辛み嫉み恨みが込められた声で語りかける。
「妾の名はカティア。罪人として忌まわしい名として伝えられているだろう。妾の真名は奪われた。真名があれば、こんな世界など破壊できるというのに……」
語らなくてもオレはわかっていた。
オレは少女の依り代、身代わり、分身なのだから。
「だが、永く幽閉されていたせいか、この狂った世界も悪くない。しかし、孤独というのは途轍もなく退屈で窮屈で、些か今の妾には永遠の刻を幽閉されるよりも辛い。
だからお前には妾の退屈凌ぎの相手となってもらおう」
しゃらりと少女の足首に繋がれた鎖が音を立てた。
「この世界の外、真の世界にお前は行くのだ。それを妾に語り伝えよ。それがお前に課す命で、お前の役割だ。お前には妾が与えた真名がある。この世界と外の世界を自由に行き来できるだろう」
少女は見上げる。
上下がない世界で見上げるという表現が正しいのかわからないが、少女は見上げ、指をさす。
「行け」
オレは立ち上がり、少女が指差したほうへと向かう。
小さな亀裂が空間に走っている。
そこに手を入れ、力を加えた。
亀裂は広がり、オレはそこから外へと飛び出した。
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