天の川(魔架)


「ねぇ……あれってなぁに?」
そう私に聞いたのは瑪瑙。
私は瑪瑙が指を指したほうに目線を移した。
そこにあるのは輝く星の川。
「あれは天の川と言うのよ」
「天の川……」
瑪瑙が静かに呟いた。
「今日はね、七夕っていう日なのよ。瑪瑙は知ってるかしら?」
私の問いかけに瑪瑙は首を振る。
「七夕の日はすごく特別なの。年に一度だけ織姫と彦星が出会える日なのよ」
「織姫と彦星……」
「織姫と彦星は夫婦でね。川を挟んで離れ離れになっているの」
私は天の川の両側にあるひときわ輝く星を指差した。
瑪瑙は私の指の動きを追う。
「七夕はその二人が出会うことの出来る唯一の日……大切な日……分かったかしら?」
瑪瑙は頷く。
それからまた夜空を見上げた。
「あとは願い事が叶う日なの」
「……どうして?」
「神様が二人のことを不憫に思って……二人の願いを叶えるから。きっと一緒に私達の願いも叶えてくれるんじゃないかしらね」
「そっか……」
瑪瑙は黙り込み、ただ夜空を見つめている。
話すことがなくなり、私も空を見上げた。
「…ねぇ」
瑪瑙が夜空を見上げたまま、口を開いた。
「お願い事……叶うんだよね……?」
「きっとね」
「……」
瑪瑙はうつむき、しばらく黙ったあと、天の川を見つめながら手を組んだ。
「……神様……どうか……どうか私の記憶が……戻りますように……」
瑪瑙は静かに願った。
「きっと戻るわ。いいえ……戻してみせるから」
私はいつの間にか瑪瑙を抱きしめていた。
「……苦しい」
「あっ……ごめんなさい……」
私はパッと瑪瑙から離れた。
瑪瑙は立ち上がり、スカートについた砂埃を払う。
「もう戻るの?」
「うん……じゃあ魔架さんおやすみなさい」
「おやすみなさい……」
瑪瑙は洋館へ戻っていった。
私はその背が洋館の中に消えるまで見送ると、天の川を見つめた。
それから手を組み神に願う。
「どうか瑪瑙の記憶が戻り……また一緒に笑いあえますように……」
私は手を離し立ち上がる。
それから汚れを払って洋館へ戻った。
神が私の願いを聞いてくれることを信じて。


▼天の川
≪神に願うなんてらしくないけど、あの子のためなら何にでも縋るわ≫

星屑の欠片

pkgイラストメインサイト

0コメント

  • 1000 / 1000