自分を求めて(紫偽)
「調整はまだ終わらないのか」
「精神が不安定過ぎます」
「兵器としては不完全かと」
「使い物になるようにするのが、お前達の役目だろうが」
「しかし……」
「いいから早く調整したまえ」
水槽の中から見える者達。
いつも我を監視し、コードを繋ぎ、機械を弄る。
我の言葉は外には伝わらないが、外の言葉は我に届く。
「こんなのが研究対象じゃないのに」
「遺伝子が同じでも、こうも違うとな」
「同じモノは作れないのかしら?」
「また最初からやりたいな」
「なんかまた近くで目撃されたらしいよ」
「やっぱり捕獲は出来ないのか?」
「相手が相手だしね」
「捕獲出来れば研究も楽なのに」
「創様は一筋縄じゃいかないよ」
は……じめ……。
懐かしい響き。
我はこの名を知っている。
我のモトとなったモノ……。
近くにいるのか。
会いたい。
「!? 精神状態が更に不安定になってます!」
「心拍数上昇!」
「能力値も過去のデータを上回っています!」
会いたい会いたい会いたい。
会いたいあいたいあいたい。
あいたいあいタイアイタイ。
「まさか暴走!?」
「針が振り切れた! 計り切れない!」
「ちょっと! あれ! 水槽にヒビが!」
「このままだとマシンがオーバヒートしてしまう!」
「早く鎮静剤を投下するんだ!」
「この状態じゃ間に合いませんよ!」
アイタイアイタイアイタイ。
アイタイアイタイあいタい。
あイたいあいタイアいたイ。
「水槽が持ちません!」
「プログラム全て起動停止!」
「まずい、もうコイツは抑えられない! ここから逃げろ!」
アイタイ。
巨大な爆発音と共に、とある研究施設は跡形もなく破壊された。
「自由……探す……はじめ……」
我は外の空気に初めて触れた。
冷たい、暖かい、温い、寒い。
呼吸……出来る。
足……歩ける。
手……動く。
我……イキテイル?
「はじめ……我のモト……探す……」
はじめ。
会いたい。
そして問う。
我のソンザイイギというものを。
我というモノを。
▼自分を求めて
≪我はナニモノ。我は何。我とは一体≫
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