喧嘩喧嘩喧嘩(繁縷)

ドンッ!
学園の廊下を御形と歩いていて、突然肩に軽い衝撃が走った。
「「痛っ」」
声が重なる。
振り向くと、同じように振り向いて私を見てる女がいた。
「ちゃんと前見て歩きなさいよ」
「ちゃんと前見て歩いてよ」
また同じような台詞を吐く。
なんなのよ、コイツ。
「「真似しないで」」
「「そっちが真似してるんでしょ」」
ことごとく同じ言葉を。
いらつくわ。
「貴女なんなのよ。貴女がぶつかってきたんでしょ」
「蒼羅はぶつかってないもん。アンタがぶつかってきたんでしょ」
蒼羅っていうの、この女。
「アンタとは失礼ね。礼儀もなってないような人と話はしていたくないわ。御形、行きましょう」
「そっちのほうが礼儀なってないんじゃないのー。謝りもしないなんて」
「なによ。私はぶつかってないもの」
「蒼羅だってぶつかってないもん」
私と蒼羅とかいう女の間に火花が散る。
私は腰に携えた錐に手をかける。

「繁縷、授業に遅れる」
「蒼羅も遅れるぜ。先生に叱られるよ」
御形が私の服を引っ張った。
向こうの赤い男の子も蒼羅の手を引っ張っている。
「遅刻は嫌だわ。蒼羅とかいったわね。貴女のこと忘れないから。次に会ったら謝らせてあげる」
「蒼羅だってアンタのこと忘れないよ。蒼羅が謝らせてやるんだから!」
「真似しないでちょうだい」
「そっちこそ!」
私と蒼羅はお互いにふんっとそっぽを向き、また廊下を歩きだした。
それからまたすぐに蒼羅と会って、私達は廊下でバトルをした。
勝敗はつかなくて、それから何度も戦った。
それでも勝敗はわからないまま、私達はいつの間にか友人になっていた。
今でも対立も喧嘩もするけど、私にあんなにいけしゃあしゃあと物を言えるのは御形と蒼羅だけね。

**********

「何笑ってるの」
蒼羅が話しかける。
「別に。思い出し笑いよ」
「思い出し笑いとか怪しー」
「相変わらずうるさいわね……って、私のチョコがないんだけど」
「食べないからいらないんだと思って食べちゃった」
「誰がいらないって言ったのよ。ちょっと、返しなさいよ」
「消化されてるのでいいなら吐くけど?」
蒼羅はニヤリと笑う。
「そんなのいらないわよ! 買って返しなさい!」
「食べてないのが悪いのよーだ!」
「勝手に食べる貴女が悪いわよ!」
「知らなーい!」
「相変わらず失礼な子ね!」
私は武器を取り出す。
また喧嘩の始まりね。


▼喧嘩喧嘩喧嘩
≪最悪の出会いで親愛なる友人になることなんてあるものね≫

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